微笑の暗殺者 ほほえみのあんさつしゃ
ねぎ秘密結社で公開されている小説。全体的にシリアス。
「微笑の暗殺者2」というタイトルの小説が存在するが、桐島上総メインという以外の関連性はあまりない。
久我恭一郎の研究品によって、今日も実験台にされる仙波継人。だが実験が失敗し、継人は死にそうな目に遭ってしまう。
搬送された病院に付き添ってきた継人の従兄である大島 橘に激怒され、珍しく落ち込む久我。
こんなに実験が大幅に失敗したのは初めてのことだったのである。
その頃、継人の病室に付き添っていた桐島上総は、継人に薬を一服盛り、入院を長引かせるという行動に出る。
久我が継人に与えた薬の分量を狂わせたのも上総であり、これから彼が遂行しようとしている計画には、継人が邪魔であったのだ。
継人のいない開発研究室。入院後に胃潰瘍を併発した継人は、明らかに実験で使った薬の影響外の病状に陥っている。
不審に思った久我が原因を調べていると、上総が現れた。
上総は、どうして久我を尊敬し、崇拝している自分を実験台にしようとはしないのかと問う。
久我は、上総が素性を偽ってねぎ秘密結社に入社してきたことを見抜いており、怪しい人物は実験台にする気はないと言い切る。
せいぜい頑張れ、と挑発じみた台詞を言い残すと久我は去っていった。
翌日、研究材料の買い出しに出た在素に、上総は付き添って行った。
久我も承知の上であった。在素と二人きりにすれば彼の化けの皮が剥がれると睨んだ上での承知だ。
予想通り上総は行動を起こした。彼は在素を喫茶店に誘い、薬品をかがせて眠らせてしまった。
在素を人質に久我を呼び出す上総。左腕に抱えられた彼女の顔には殴られた跡があった。
常に冷静であった久我の表情から少しだけ冷静さが消える。なんのためにこんな事をするのかと問うと、
上総は久我の大切な物を奪いたいだけだと答える。
上総は22歳の時に、妻であった桐島奏子を癌で亡くしている。当時妻が入院していた病院には久我が在籍しており、
彼が作った薬を投与したことにより妻の癌が悪化して、亡くなったのだと思い込んでいるのだ。
久我は、それは事実無根であり、奏子が危篤状態になるまで一切関わったことはなかったと答え、
たとえ上総の言い分が事実であったとしても、人を殺して手を血に染めれば妻は喜ぶのか?と問う。
だが上総は耳を貸さない。
その時、薬で寝込まされていたはずの仙波継人が現れ、上総は殴り倒されてその場に沈んだ。
復讐を果たせなかった上総は、隠し持っていたナイフで自らの左手首を思いきり斬りつけた。
久我のとっさの機転により、一命を取り留めた上総。しかし復讐に失敗した彼は生きる希望を失っていた。
警察でもどこでも突き出せばいい、と投げやりに言い放つ。久我は、過ぎたことなどどうでもいいと答える。
自殺などしても妻が喜ぶはずもないだろう、と諭し、妻の死の原因を調査機関に依頼し調べさせた書類を手渡すと、
自分の進む道は自分で決めろと言い残し、去った。
そして、上総の決めた道とは…。